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では、親がいったいどうすれば、彼女のように出口を見つけられるのか。そして、座間事件のような危険な目に遭わずに済むのだろうか。

学童保育所の卒所生を中心とした子どもたちの居場所であり、小中学生対象の学習塾でもある「小金井学習センター」(東京都)で30年間講師として勤めた口山衣江さんに話を聞いた。

同センターは、子どもや教師の自由度が少なくなった学校教育に不安を感じた父母らによって、「必要なものは自分たちでつくろう」と設立されたところ。受け身でない学習方法は、昨今注目される「アクティブ・ラーニング」とほぼ同じだ。

「貧困が連鎖するように、親が孤独だと子どもも孤独になるのではないか。お互いに本音でしゃべってストレスを吐き出したり、情報交換してよいやり方を考えられる。おせっかいをし合えるママ友がいれば、乗り越えられるのだと思う」

口山さんらスタッフが「大人と子どもが育ち合う」をテーマに作り上げてきた同センターでは、保護者会が毎月開かれる。そこでは、親たちが、「迷いながら、あがきながら、意見を言い合いながら、いつの間にか孤独でなくなっていく」という。

生きづらさを抱えている生徒が多い

そのように親子が育ち合う場所を作ってきた口山さんは現在、都内で通信制高校の講師を務める。授業にやってくるのは、予定人数の数割が日常だ。

「どこか生きづらさを抱えている生徒が多いと思う」

昨年始まった1年生の教室は4人。最初の授業は、教室の四隅の机にそれぞれ座っていた。

「みんな真ん中に集まって」と言っても、誰ひとり動かない。1人の男子生徒はマスク姿で瞳がぎりぎりのぞくだけで表情もわからない。ただ、一人ひとりに「私と会話できるところに来てくれる?」と言ってまわると、それぞれ集まってくる。

「家庭に問題があったり、中学でいじめられていたり。そんな周りに対して突っ張っていたり、希望が持てずに内にこもっていたりする。でも、一人ひとり付き合うと、みんないい子ばかりなんです」

入念に準備した国語の授業を始めてみたが、意見を求めても誰も反応しない。「これってどうかな?」「どう思う?」と促しても、最初は目を伏せて無言だった。ところが、しばらくしたら、生徒たちは何度かに1度はパラパラと自分の思っていることを話すようになった。


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