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それには大きく2つのポイントがあります。

「複雑な資料をつくってしまいがち」ということと、「自分が伝えたいことが自分でハッキリしていない」ということです。

いちばん伝えたい「コア・メッセージ」は何か

GEの幹部(およびその候補者)向けのプレゼンテーション研修の、「メッセージづくり」のセッションの冒頭で、私はいつも1枚の写真を見せていました。その写真は、指輪が入った箱を持った男性がひざまずいて、女性にプロポーズしているシーンを切り取ったものです。

プロポーズをするときのように「自分が伝えたいメッセージ」がはっきりしていて、そしてそのメッセージを実現したいという情熱がこもっているなら、その思いを伝えるために“複雑なスライド”も“資料”も必要ありません。研修の参加者に、プレゼンの「メッセージづくり」において最も基本的で大切なことを印象づけるため、私はその1枚の写真を使ってきました。

たとえばプレゼンをするようなとき、ほとんどの人は資料・スライドづくりに多くの時間を割きますが、自分のメッセージを簡潔で強いものに洗練するためには、あまり多くの時間を費やしていません。

そのような人が多くなってしまったのは、1990年代後半から急速に普及したパワーポイントの使い方に間違いがあったからです。パワーポイントのバージョンが上がっていき高機能化するに従って、それが「魔法の杖」であるかのように錯覚する人が増えました。そして、この「魔法の杖」を駆使して凝ったスライドをつくることが善であるという考え方が蔓延してしまったのです。

本来であれば、プレゼンの“武器”として存在するはずのパワーポイントが、いつの間にか“主役”になってしまっているのは残念なことです。

しかし、このようにパワーポイントの使い方を間違えてしまった根本的な原因は、簡潔で強いメッセージをつくらないまま、スライドづくりに取りかかってしまっていることにあります。

自分の話(プレゼン)全体に一貫性を持たせられる芯となる、しっかりしたメッセージを最初につくることが肝心です。では、どのくらい「簡潔」なコア・メッセージをつくるとよいでしょうか。

事例――「簡潔で強いメッセージ」

ここで、少し特殊な事例かもしれませんが、私が見て「簡潔で、力強いな」と感じたコア・メッセージを紹介します。

それは、1枚のスライドに、

「Green is green」

とだけ書かれたものです。2005年、GEは環境に優しくかつ経済合理性に富んだ製品づくりを推進していくという重点取り組み施策「ecomagination」(エコマジネーション、ecoとimaginationをくっつけた造語)を立ち上げました。私がGEに入社した2007年には、日本でもこの取り組みを本格化させるために、研修などの教育的な場面で、この施策を浸透させようとしていました。


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