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その施策展開のために、アメリカから説明用のスライドが送られてきました。ファイルを開いてみると、余白だらけの1枚のスライドが目にとまりました。スライド上部のタイトル部分には「Green is green」、スライドの中央には「ecomagination」という文字だけが書かれ、そして右半分にはその取り組みを象徴する絵が小さくポツンと配置されているというものでした。

スライドのノートの部分に「この取り組みを展開するにあたって、CEOのジェフ・イメルトはこの1枚のスライドだけで記者発表を行った」との注意書きがありましたが、「Green is green」の説明は見当たりませんでした。「緑は緑」……当時の私は意味がわからず、ポカンとしてしまいました。

アメリカの同僚にメールで聞いてみると、いわく、「最初のgreenは環境ビジネス(green business)を意味しており、2つ目のgreenは、アメリカのドル紙幣のことだ」ということでした。アメリカのドル紙幣は元々裏側が緑色で、別称「greenback」といわれます。つまり、「Green is green」の意味は、「環境ビジネスは利益を生み出す」という、一見いやらしく思われかねないメッセージだったのです。

しかし、このメッセージが発表された場所を考えてみてください。メディアやアナリストたちが集まる会見の場です。彼らの関心は、企業業績(株価)がどうなるかということでしょう。しかも、多くの企業に見られることは、「環境に優しい製品づくりに取り組むと、コストがかかって業績が伸び悩む」という現象です。そんな懸念を払拭しながらも、具体的かつ簡潔に取り組みについて説明しなければなりません。

そのような状況の中、イメルトは、環境に優しい製品づくりと、企業がそこから得られる利益を犠牲にせずに両立させるというコア・メッセージを、この「たった3語」に込めたのです。

イメルトは記者発表の席で、具体的にこの取り組みをどう展開するかということについての詳細なプランも当然話しました。全体で約30分にわたるスピーチでしたが、使用したスライドはこの1枚だけだったのです。

「15語」以内――記憶に残るメッセージの法則

ここまで短い文でコア・メッセージをまとめるのは至難の業です。それでも、「短くまとめる」ことが肝心ですので、GEでは「15語」というツールを用いて、その語数の中でメッセージをまとめるように教えていました。

英語で15語ですから、日本語の場合は25?30字くらいになります。英語でいうところの「15語」は、語数であって文字数ではないので誤解のないようにしてください。

私が教えるプレゼン研修でも、実際に使用した(もしくは使用する予定の)スライドを持ってきてもらい、そのプレゼンで伝えたいコア・メッセージを「15語」でまとめる演習を行います。

コア・メッセージを考えるときのコツがあります。それは、英語で表現する場合は、「How can we」で始めるというものです。そうすると、メッセージがまとめやすくなります。日本語の場合は、「どうすれば……」という言葉でメッセージを書きはじめます。あなたもこの要領で、実際に行った(行う)プレゼンのコア・メッセージを書いてみてください。


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