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こうした市場の底固さを考えるうえでは、2月を中心とした世界市場の波乱が、実際は何によるものであったかを踏まえるのが重要だろう。

これまでも当コラムで述べてきたように、波乱は米国発だった。つまり、「トランプ政権が減税やインフラ投資を繰り出すから、株は買いだ」「これまで米国株価は大した波乱をみせなかったから、これからも波乱はない」という楽観論に浮かれ、投資家が米国株式を買っていた。このため、企業収益との比較では予想PER(株価収益率)でみると、全く正当化できない「買われ過ぎ状態」になっていた。その買われ過ぎ状態から、米長期金利の上振れを「口実」として、とうとう株価がボキッと折れて下落した、ということが、波乱の真相だったのだろう。

また、米ドル円相場については、1月の初旬まで、先物市場における円売りのポジションが積み上がっていた。そのポジションの買い戻しにより、まず1ドル=113円から108円へ、その後は110.50円近辺から105.50円近辺へと、「2回の5円幅」の円高が進んだと考えられる。日本株の下落は、こうした米国株安や米ドル安・円高に巻き込まれただけだ。

しかし、米国株価が下落したことで、予想PERの水準は、通常の範囲にいったん復帰した。米ドル円先物市場では、円の買い戻しはかなり進み、円の売り残高は十分減少した。したがって、前述のような悪材料が盛りだくさんでも、米株や米ドルの調整が限定的(結果として、日本株も下落しにくい)なのは、すでに株や外貨を売る投資家は、ほぼ売り終わってしまったからだ、と推察できる。

「中国がいらなくなった」トランプ大統領

ただし、これからトランプ政権がどういった「末路」をたどるかは、引き続き注意深く見ておく必要がある。ワシントンの政治ウォッチャーのなかには、「以前からずっとトランプ政権はダメで、それが相変わらずダメなだけだから、気にすることはない」と語る向きはあるが、さすがに市場に影を落とす局面は、これからも生じうる。

特にこのところ懸念されるのは、対中関係だ。トランプ政権は対中政策を変更したとみられるが、それは朝鮮半島情勢と無関係ではないだろう。以前は、中国に対し、北朝鮮を説得するという役割を、米国側が期待していた。そのため、その分中国に対する「遠慮」があった。実は中国も、それを十分に理解していた節がある。米国からの貿易問題に対する攻撃を先延ばししようと、だらだらと北朝鮮に対する説得工作を本格化しなかったようにも思われる。


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