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――2020年度からは大学入試に英検やTOEICなど民間の試験が利用できるようになります。

まったくばかげてます。大学生に求められる英語能力は原書講読能力に尽きる。大学院生や研究者ならこれに加えて論文記述力です。

文部科学省官僚の根深い西洋コンプレックスが1980年代以降の英語教育“改悪”につながった。読み書きなんかいいから、子どもたちがカタコト英語くらいしゃべれるようにしようと、“使える英語”と称した上っ面のコミュニケーション重視へカリキュラムの舵を切った。

平易な口語表現を丸暗記せよ、難しい文法用語は使うなと。初級文法さえ習得せずに英語力が伸びるはずがない。私は翻訳を教えていますが、TOEICでスコア950を取っているのに文法をよく理解してない生徒などザラ。文法は、きちんと通じる正しい英語を組み立てるのに必要不可欠な知識。ちょっと乱暴な言い方をすれば、学校でやる英語に「話す」「聞く」はなくていいと僕は思っている。

英語教育は早いほどいいというのは幻想

――学生は読み書きだけでいい?

猪浦道夫(いのうら みちお)/1949年生まれ。横浜市立大学、東京外国語大学イタリア語学科卒業後、同大学院修士課程修了。その間にイタリア国費留学生としてローマ大学留学。大学院在学中にポリグロット外国語研究所設立。50カ国語の翻訳、20カ国語の語学研修に携わる(撮影:今井康一)

そう。一定以上の英作文力です。今や大学の英語の授業は会話、会話、会話……。作文力は30年前から低下の一途。文法教育が壊滅的になっているからです。基本を学んでないから上達しない。カリキュラムが非常に易しくなっていて、僕らが中3で習った英語を今は高2の終盤くらいでやってる。アルファベットの順番を覚えてないから紙の辞書を引けない学生など珍しくない。高1くらいまでの文法をきちんとやって、基本的な単語を書けるようにしてから会話を学べば、会話はすぐ上達します。

ちなみに、英語教育は早いほどいいというのは幻想です。小学校における英語教育はハッキリいって危険。小学生に英語は差し迫って必要ではないのに、大人たちがグローバル化の強迫観念で子どもに学ばせているだけ。英語を学ぶ以前に国語力に立脚した思考能力がなければ話にならない。小学校から中学校までは日本語をきちんとやってほしいんですよね。


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