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――日本市場は海外市場とどう違いますか?

日本のお客様は本当にブランドが好きです。ただしそれはハイブランドに限ったことではなく、ずっとカジュアルなブランドに対しても、それが自分に合うかどうかを慎重に考えます。リピーターが多いのも日本のMINIユーザーの特徴です。一度好きになってもらえたらずっと好きでいてくださる印象が強いですね。その代わり、何かの理由、たとえば不祥事などによってブランドに傷をつけてしまうと、一気にそっぽを向かれてしまいます。一度気持ちが離れると挽回は難しい。非常に慎重にブランドをコントロールしなければなりません。

MINIのEVとの向き合い方

――今、自動車業界は電動化の話題で持ちきりです。MINIは次世代技術にはどう向き合いますか?

今後どのようなパワートレーンが主流になるのか誰にもわかりません。間違いないのはICE(内燃機関)のみで動くクルマが徐々に減っていくことのみ。パワートレーンについてはBMWグループ全体の戦略に組み込まれるので、私がMINIを代表して話すことはできませんが、私個人はMINIにはEV(電気自動車)がいちばん似合うと思っています。

われわれは2011年にMINIを使ったEVである「MINI E」を開発し、数百台を生産して世界中のユーザーに渡して実証実験までしたように、早くからEVに関心を寄せてきました。これは発進と同時に最大トルクに達するEVなら、自分たちが理想とする“ゴーカートフィーリン”をより強調することができるとエンジニアが考えているからだと思います。

――MINIのEVが本格的に発売されるのはいつごろでしょうか?

うーん、その時には招待します(笑)。

<取材を終えて>
MINIは万全のポジションにある。1959年から続く最強の愛されブランドであり、メカニズムの面はジャーマンプレミアムの一角を占め、それ自体も有数のブランドであるBMWが責任を持つのだから。どう復活させても「コレジャナイ」と言われるリスクのあったMINIを買収し、姿かたちだけそっくりのパイクカーではなく、勇気を持って自分たちが考える新世代MINIを世に送り出し、世界中を納得させるだけの商品性をもたせたBMWが収穫し続けている果実がMINIなのだ。
BMWは、長年、そこに需要があると、どのプレミアムブランドもわかっていながらチャレンジに二の足を踏んでいたコンパクト市場に、MINIの力を借りて参入、大成功した。BMWブランドのままFF(前輪駆動)車を造って参入していたらMINIほどの成功があっただろうか。ともあれ、その後、実に多くのプレミアムブランドがコンパクト市場に参入したが、MINIほどの成功を収めたブランドはない。
MINIが「大きくなった」と嘆くのはわれわれ自動車ジャーナリストばかりで、クロスオーバーやクラブマンは日本ではファミリーカー、ファーストカーとして絶妙なサイズ。人気が出る要素をすべて満たしている。加えて、ロカ本部長はブランドの重要性を強調していたが、ガソリン、ディーゼル、プラグイン・ハイブリッドとパワートレーンの選択肢も豊富で、まずプロダクトとして魅力的なのが大きい。
今後、クルマは都市部を中心に所有から利用へのシフトが進むと思われるが、MINIあたりが率先してメーカーとしてのシェアリングサービスを始めると面白いのではないだろうか。なぜなら確固たる人気があるブランドが始めないと、うまくいかない場合、シェアリング自体に人気がないのかそのブランドの人気がないのかわからないからだ。
MINIのさまざまなバリエーションを必要に応じて使い分けるというのは、ちょっとわくわくするカーライフではないだろうか。
塩見 智 ライター、エディター

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しおみ さとし / Satoshi Shiomi

1972年岡山県生まれ。関西学院大学卒業後、山陽新聞社、『ベストカー』編集部、『NAVI』編集部を経て、フリーランスのエディター/ライターへ。専門的で堅苦しく難しいテーマをできるだけ平易に面白く表現することを信条とする。自動車専門誌、ライフスタイル誌、ウェブサイトなど、さまざまなメディアへ寄稿中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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