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体の痛みは必ずしも身体的な状態が原因ではない(写真:Ushico/PIXTA)

新年度を迎え、昇進・昇格した人も多いだろう。自分の仕事ぶりや業績が認められるのはうれしいことだが、昇進がきっかけとなって、長引く体の痛み(慢性痛)が始まることもある。

ペインクリニックと呼ばれる分野の専門医である筆者のもとには、他の病院や診療科で診てもらっても症状が改善しないという理由から、慢性痛の患者がたくさん紹介されてくる。そんな患者の1人に、首・肩・背中に痛みを抱える30代後半のエリート男性がいた。

昇進がエリート男性を苦しめた

この男性は、有名私立大学の経済学部を優秀な成績で卒業し、大手企業に入社した。そこで営業職として大きな成果を収め、数年後には別の大手企業に引き抜かれて営業関係の部署に就いた。そこでもすばらしい業績を上げたことで昇進して、数人の部下を持つことになった。

だが、これがよくなかった。

男性は昇進後、部下の面倒をみつつ、自分の仕事もこなさなければならなくなり、仕事量が増大した。しかし、コンプライアンスの関係から、仕事を持ち帰ったり週末出勤したりすることができなかった。結局、平日の早朝から深夜まで、食事やトイレに行く時間さえも満足に取れない状態で働き続けた。

土日はその反動で昼近くまで寝て、起きた後もボーっとして何もする気力がなく、ブラブラしていると終わってしまうような生活になった。そのうちに肩がパンパンに張りはじめ、やがて首や胸背部の痛み・張りが広がっていった。

体が痛くなり始めた当初は、土日にマッサージや鍼灸で治療を受けて良くなっていたが、やがて効果はなくなった。両上肢にしびれも感じるようになったため、整形外科を受診したが特に問題はないといわれ、治療もされなかった。

男性は次第に自分が納得できるような仕事ができなくなり、病欠を取り始めた。そして休職となった。


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