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映像として流す内容はもちろん、テレビがそれをどう解釈するか。それによって人間の思考も変わっているはずです。テレビが取り上げる人物が注目を浴び、テレビが評価する人間が権力を握る、そうしたことが実際に発生しました。

現在は同じことが、より大きなスケール、しかも全世界的に起きていると言えるでしょう。しかも、どの単一の政府も十分にはコントロールできない状況でそれが発生しているのです。

GAFAの“闇”が世に知られないのはなぜか

――他方で、公開情報がベースとはいえ、GAFAの闇の部分を描いた本はほとんどありません。真正面から挑めない、あるいは敵に回したくないという感情が皆どこかにあるのではないかと思いますが、いかがですか。

メディアと検索結果を支配している存在というのはやはり強い。GAFAのようなプレイヤーたちには、なかなかモノを言いにくい空気があるのは事実だと思います。また、それを言う存在が認められるだろうか、とも思います。

アップルが嫌いだと言っても、アップルを信じている人はたくさんいます。そんな中でアップルに「NO」と言えるか。少なくとも言いやすい空気ではありませんよね。

また彼らは政府やメディアに対してもかなりの影響力を行使できる存在です。たとえば本書でもニューヨーク・タイムズの話が取り上げられていましたが、グーグルがアルゴリズムを変えた瞬間、利益が吹き飛ぶわけです。そんな中で、ニューヨーク・タイムズはGAFAを批判する特集が組めるかといったら、なかなか難しい。

さらに、彼らの事業展開は世界中の頭脳が支援しています。たとえば、タックスヘイブンの話はわかりやすいですね。各国の税制上まったくもって問題のないトランザクションを積み重ねることで、兆円以上の租税負担を軽減することに成功しています。もちろん、こうしたスキームの開発に、世界最高峰の頭脳がかかわっているのは公然の事実です。圧倒的な資金力を背景に、世界最高峰の知見を用いて優れた経営の基盤を作り出している。しかしその経営の基盤は単一国家の一人の国民から見ると、よくよく考えると「どうなんだろう」ということをしているともいえるかもしれません。

たとえばアマゾンなら、非常に劣悪な労働環境下で、トイレに行く時間もなくおむつをはいた従業員が働いているといった報道があります。またフェイスブックが情動感染の心理学実験をしていた、つまりユーザーの感情をコントロールするような実験をしていたという事実が過去に問題になりました。グーグルの場合、「天安門」と検索すると、イギリスと中国とでは異なる検索結果が出てきたことも過去に問題になりました。こうした話は一般に公開されている事実ですが、こうした事実を知っている人も、それを問題視している人もほとんどいません。かくいう私も、利便性に負けてGAFAのお世話になっていますし(笑)。


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