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さっそく、新宿の雑居ビルに入っている不動産屋に入ってみた。自社では物件を持たない「不動産仲介業者」にあたる。

松原さんは担当についた男性に

「事故物件に住みたいんですが」

と正直に切り出した。担当者は少し困った顔になった。
しばらくやり取りをした後、奥からベテランっぽい人を連れてきた。いかにも“デキる”雰囲気の不動産屋さんだ。

「告知事項あり」物件はかなり特殊な探し方になる

「いわゆる事故物件を示す『告知事項あり』の物件のみを探す、というのはかなり特殊な探し方になるんですよ。そもそも『告知事項あり』というのは避ける物件なので、あえて探す機会は少ないんです。

不動産屋によっては『そういう探し方はできません』と断られる場合もあると思います。ただ私は不動産業界が長いので、調べ方を知ってますけどね」

そう言うとニヤリと笑って、パソコンにガガガガッとデータを打ち込んだ。さすがベテランである。

松原タニシ(まつばら たにし) /1982年生まれ。松竹芸能所属のピン芸人。 現在は「事故物件住みます芸人」として活動。 これまで大阪、千葉、東京など6軒の事故物件に住む。 日本各地の心霊スポットを巡り、インターネット配信も不定期に実施。事故物件で起きる不思議な話を中心に怪談イベントや怪談企画の番組など多数出演(写真:筆者提供)

調べているのは不動産仲介業の免許がないと見ることができないサイトだ。そのサイト内で客に紹介できる、全国の物件がほぼすべて載っているという。

つまり、不動産仲介業者で物件を紹介してもらう場合、基本的には日本全国どこの業者に行っても同じデータが参照されるのだ。

良い物件が探せるかどうかは、担当になった人のやる気やスキル次第である。

「『事故物件でいいから安い物件探してくれ』という人っていないんですか?」と松原さんが尋ねた。

「う?ん。いないわけではないですけど、そういう人は少ないですね。むしろ『告知事項あり物件』ということを知らないで来る人が多いです。値段や条件を見て『借りたい』と言ってくるのですが『人が亡くなっている物件ですけどいいですか?』というとほとんどの人が帰られますね」

告知あり物件の多くは、人が亡くなった物件が多いが、それ以外の物件もあるという。

たとえば、アパートに住んでいて隣室の住人がひどいクレーマーであり、それを苦に引っ越した場合、新しい住人には「隣室にクレーマーがいます」と告知しなければならないという。

また、近隣に暴力団関係者が住んでいる場合も住人に告知しなければならない。ただし新宿・歌舞伎町のように暴力団関係者がいることが前提の街だと、問題にならないこともあるようだ。


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