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ビルの1階部分はレストランだった。ビルの外壁には看板が出ていたのだが、すべて外国語で書かれていて読めなかった。

共用スペースの壁はホラー映画のように汚れている。

ボタンを押すと、ボロボロのエレベーターが、ゴウン……ゴウン……と騒音を出しながら降りてきた。

入り口のすふまいっぱいにポスターや写真が貼ってあった(筆者撮影)

物件のある階に到着する。隣の部屋には、中国語の看板が出ていた。

どうやらマッサージ店のようだ。

後で知ったのだが、1階下にはヨーロッパ人が営む喫茶店が営業していた。国際色豊かなビルである。

室内に入って「ええ?」と思わず声が出てしまった。事故物件うんぬんの前に部屋としておかしかったのだ。

入り口のふすまにはビッチリとポスターや写真が貼られていた。大きいキリンのポスターが貼られていたのが印象的だった。

キッチンはペンキで真っ黄色に塗られていた。ヒューズボックスは真緑に塗られ、外国人のヌードポスターが貼られていた。

「自殺したおじさん、アーティストだったみたいですね……」と、松原さんがつぶやいた。

室内は確かに広かった。新宿で10畳の部屋に住める人とはなかなかのセレブリティな気分だ。

部屋には窓が3つあったが、この窓もおかしかった。まず窓枠が真っ赤に塗られていた。そして1つの窓は床スレスレの場所にあった。床にある窓なんて今まで見たことがない。

窓枠が真っ赤な窓。なぜか床すれすれにも窓が(筆者撮影)

そしてすぐ隣の高い位置にも窓があった。こちらはなぜか鉄柵がしてある。そしてこちらは押しても引いてもまったく開かない。開かずの窓だ。意味がない。

そしてメインの窓はとても大きくて、気持ちが良かった。しかしこの窓が途中までしか閉まらない。どうやら窓枠か部屋自体がゆがんでいるらしい。

階下からゴーッという換気扇の音が聞こえてきた。しばらく後に、肉を焼く臭いが漂ってくる。1階のレストランが営業を始めたらしい。


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