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夕方、混雑する那覇市内の道路を走るバス(筆者撮影)

一方で、沖縄本島を走る路線バスは地元の人によく使われているかというと、決してそんなことはないのも現状だ。路線バスの旅客輸送分担率は5%未満で、県民一人が1年間でバスを利用する回数は平均19回(2014年調べ)。その一方で自家用車主体の交通となっている那覇市街は交通渋滞に悩む。混雑時の平均速度は15.9km/h(2014年度)で、三大都市圏よりも混み合っている。

そのため、地域ICカード「OKICA」導入や国道58号に10.4km(南行き・朝時間帯規制)のバス専用レーンを設けるなどの施策で路線バスの利用促進をしようとしているが、まだまだ道半ばだ。

そこで観光客の移動支援と県民向けの公共交通利用促進を同時に行おうというのが、今回のバスやモノレール、航路、レンタカーの情報整備というわけだ。「賢く公共交通もレンタカーも利用してほしい」と大仲氏は語る。

観光業者とバス会社には温度差

もちろん、この事業には課題もある。1つは観光事業者とバス事業者の温度差、もう1つは持続的なデータ整備の組織作りだ。

沖縄県庁で行われたデータ整備に関する委員会(筆者撮影)

7月に行われたデータ整備へ向けた委員会では、観光事業者側から「バス会社は前のめりになってほしい。これまでは県民140万人を相手にした商売だったかもしれないが、観光客を入れれば一気に市場は1000万人に広がる」「バス旅はいま観光のトレンドになりつつある、広めていきたい」という積極的な意見が出た一方で、交通事業者側からは「一部の路線だけ恩恵を受けて終わりとならないか心配だ」「バス事業者にはGTFS形式のデータというのがよくわからない」と及び腰になっている部分も見られた。

沖縄に限らず、一体的なデータ整備の取り組みには、交通事業者側の不安がぬぐいきれずにデータ整備の大きなハードルとなるケースが多い。本来はこうしたオープンデータは事業者の生産性向上に役立つものだ(東洋経済オンライン5月20日付記事「『グーグルマップ』に載るとバスは便利になる」)。しかし、データ整備による具体的な恩恵が見えにくいことや、情報を提供することで想定されるクレームに対する不安がどうしても事業者に二の足を踏ませる。

一方で、早くも自主的にGTFS形式のデータを整備した事業者も出てきた。那覇空港と美ら海水族館や本島北部の運天港を結ぶ「やんばる急行バス」ではGTFS形式のバス情報整備を行っており、那覇空港では実際にGoogleマップで調べ、やんばる急行バスを使う観光客も出始めているという。


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