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SUBARUが水平対向エンジンにこだわる背景に、中島飛行機からの伝統が1つあるのは事実だろうし、もう1つは水平対向エンジンならではの低重心も技術的な利点だと語る。

水平対向エンジンとEV化のジレンマ

だが、EV化し、モーターとバッテリーで走るクルマに仕立てれば、もっと低重心になる。なおかつモーターを電気で制御すれば、エンジン車より緻密に4輪駆動の制御ができるはずだ。つまり、SUBARUが目指す究極の操縦安定性は、EVのほうがはるかに高い可能性を秘めているのである。

5ドアハッチバックのインプレッサスポーツ(写真:スバルグローバルメディアサイト)

エンジンや機械の形式にこだわるのではなく、本質的な高い走行性能と優れた安全性を目指すなら、EV化が最適で、それこそSUBARUの企業スローガンである「安心と愉しさ」を体現するはずだ。

安心とは、単に安全であるだけでなく、環境や社会に対してSUBARUに乗り続けることが最適であるといった精神的安心もあるはずだ。

同じ水平対向エンジンを特徴としてきたポルシェがEVをつくる時代である。スバリストを無視していいということではなく、スバリストも歓迎できる企業哲学とモノづくりの本質を追求する姿として、EV化の意味を真に世に問うのがSUBARUらしさではないか。そういうことに期待する顧客が、いまインプレッサを支持し続けているのだと思う。

だからこそ、完成車検査問題などがありながらも、インプレッサの販売は堅調にここまで推移できたのだろう。しかしここにきて、根幹となるエンジンのリコール(2012?2013年)問題が起きた。いまこそ電動化を決断する時期ではないだろうか。SUBARUはかつて、EVの先端技術を持っていたのだから。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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