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ハガティ駐日大使のこうしたメッセージは、日本だけでなく、当然アメリカにも伝わっている。つまり、同駐日大使は、自らがトランプ大統領を代表しているということを、アメリカの交渉関係者に対しても明確にしようとしているのである。

これに対して、アメリカの著名な通商専門家であるマシュー・グッドマン氏は、「ハガティ駐日大使のコメントには驚いたが、彼は単に“悪玉”を演じているのではないか」と見る。

元ホワイトハウス職員で、現在ワシントンにある戦略国際問題研究所に勤めるグッドマン氏は依然として、中国、ヨーロッパ、そしてWTO(世界貿易機関)改革と比較すると、日本との交渉はロバート・ライトハイザーアメリカ通商代表にとって優先順位が低いと考えている。トランプ政権は日本市場への参入を求める農業部門からの国内政治圧力の下にある。

日本側は「日本に不利になる取引には応じない」

「彼らはなんらかの二国間(合意)を必要としていて、日本は最も簡単な相手だ」とグッドマン氏は言う。「だが、すべての通商交渉と同様、いったんパンドラの箱を開けると、それはすぐに複雑になり、合意に達するのに人々が考えるより長い時間がかかる可能性がある」。

一方、日本の政府関係者がハガティ駐日大使のメッセージにおびえる様子はない。日本のある政府幹部は「茂木経済再生相は、今後の交渉のためのシャドーボクシングはせず、実際に交渉が始まるまでは静かにしている」と話す。「アメリカ側がどんなに攻撃的になろうとも、われわれは与党と国会の承認が得られるものにしか同意できないし、日本に不利になるいかなる取引にも応じない」。

今のところ、日本は予測不能なトランプ政権が、アメリカ国内情勢の風に動かされてどう動くかを見守っている。前述の日本政府関係者は言う。「交渉は間違いなく、われわれの同盟関係にとってチャレンジとなるはずだ」。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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