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正確な会計用語として、内部留保が使われることはない。上場企業が公表する決算書を見てもわかるように、内部留保という言葉はどこにも載っていないからだ。

決算書の項目に対応させるのであれば、利益剰余金や利益準備金などが内部留保にあたるだろう。内部留保は「過去の利益をため込んだもの」という漠然としたイメージを持たれている。これが内部留保=金庫にため込んだ現金、といった誤解につながっていると思われるが、このイメージ自体は決して間違っていない。

売り上げから費用と税金を差し引いたのが税引き後純利益(略して純利益)、利益から役員報酬や配当を支払った後に残ったのが、すでに説明した利益剰余金や利益準備金として積み上がる。

「『過去にため込んだ利益』を給料とか設備投資に回せなんて当たり前」ということになるのかもしれないが、実際にはそれほど簡単な話ではない。これは簿記・会計のベースとなる「複式簿記」の考え方を理解する必要がある。

企業会計を知らずに内部留保を語るなかれ

売り上げが100万円発生したときに、企業会計のルールでは「売り上げが100万円」とは考えない。「売り上げが100万円発生し、現金が100万円増えた」と考える。つまり「複式」だ。簿記のルールに従って記載すると以下のようになる。

現金?100/売上?100

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このような記録の仕方を「仕訳(しわけ)」と呼ぶ。

売り上げ100万円で現金が100万円増えるなんて当たり前のことをわざわざ記録する必要があるのかと思われるかもしれないが、企業の取引では現金取引のほうが少ない。月末締めの翌月払い、とクレジットカードのように支払いがなされるのであれば、いったん売掛金(ツケ)として計上され、その後ツケを回収する流れになる。これを仕分けで表示すると以下のようになる。

売り上げ発生時
売掛金?100/売上?100
回収時
現金?100/売掛金?100

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