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しかしここで、鳴海ならどんな対応を取るか考えたとき、やっぱり「デジタル万引きは犯罪だ」と伝えたいんじゃないかと思ったんです。「君たち(生徒)はデジ万した漫画の作家が好きなのかもしれないけど、結果的に君たちの行為はその漫画家を侮辱し、生活できなくさせているんだ」ということをはっきりと言わせようと。

つまり、僕としては2つの案を出しました。両方ともありだと思っています。

正論と正論のぶつかり合いがドラマを生む

――問題に対して画一的な答えを提示しないということですね。なぜでしょうか?

口述筆記で脚本を創作するスタイルを採っている(撮影:今井康一)

いま世の中が曖昧で難しい分、ドラマにはわかりやすさが求められているのかもしれない。ただ、僕は「次はそういうの書きます」とできない。正論と正論のぶつかり合いがドラマを生むと思っています。

たとえば、「夢は必ず叶う」と思っている人に対して、「そうだよね」と賛成するのか、「そんなのあるわけないだろう」と反対するのか。普通に考えれば叶わないんですよ。みんな叶っていたら、夢を叶えた人たちばっかりになっているはずです。じゃあどうするのか、議論することが大事だと思うんです。

今回のドラマで言うなら、校長としては「偏差値を上げたい」「大学受験はさせたい」けれど、それだけじゃないという気持ちもある。この曖昧な部分が、僕はリアルだと思ったんですよね。

――確かに、高校生の純粋な問いに対して「大人が葛藤を見せる」シーンがよく見られます。これも取材からの実話なのでしょうか。

(脚本を書くにあたって)最初は取材メモとかを見ながら書くんですけど、ある程度ドラマが進んでいくと、「僕だったらなんて言うだろう」と考えるようになります。

たとえば、「高校3年生を全員集めてスピーチをする」ことだけが決まっているとして、そこで主人公が何を話すかはノーアイデアです。そうなると「僕はこのドラマで何を書こうとしてるんだろう」とか「鳴海校長(主人公)ならなんて言うだろうか」とかじゃなくて、「僕がこの立場に立ったとしたら何を言うか」って考えだすんですよ。実際、(ドラマの中で)鳴海が高校3年生全員を前に「就職してブラックだったら逃げるか逃げないか、自分で線引きしなきゃダメだ」って話をするんですけど、それは学校の先生が言うべきだと僕が本当に思っていることです。


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