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彼女のあこがれのセリーナ・ウィリアムズもまた、ツイッターやインスタグラムを駆使して、さまざまなメッセージを発信してきた。

人種の多様性が豊かなカリフォルニア州では、二重国籍自体は特別珍しいことではなく、プロテニス界には2つの国籍を持つ選手はほかにも複数いる。

アメリカ人観客やボランティアたちの関心は、彼女の「国籍」よりむしろ、大坂が完璧な今どきの若者のアメリカ英語の語彙で話しつつも、いわゆるアメリカンな自信満々な態度を取らず、くすっと笑いながら、小さな声でぼそっとつぶやくその発言が、リアルで予測不能で面白い、という点だった。

「自分で自分のスピーチのことを『史上最悪の優勝スピーチかも』と言って、会場中の笑いを取れるチャンピオンなんて、いままで見たことない」。複数のボランティアたちがそう語った。

この業界でまれな清々しさ

「優勝すれば、日本人選手としてのこれまでの記録を破ることになるが、その点はどうか」と記者に聞かれた時も大坂は「別に……特に意識してない」と答えていた。

そんな彼女をアメリカ人観客たちは「unpolished」や「unfiltered」という言葉で形容し「この業界でまれな清々しさ」と評したりする。

息子が大会ボールボーイをつとめるビバリー・ハラーさん(筆者撮影)

賞金よりもスポンサー収入に頼りがちなプロテニス選手たちにとって、立て板に水のようにスポンサー企業名をすらすらと列挙できるスムーズな話術は、ほとんど必須なスキルでもある。そんな中、木訥(ぼくとつ)とした話しぶりで、自分をユニークに表現する若い大坂の存在は、アメリカでも、極めて斬新だと見られている。

「なおみがクスクス笑いながら話すところが何ともアジア的な感じ。彼女の豪快なフォアハンドの打球を見ると、女子にもついに若い強い世代が台頭してきたなと感じてうれしい」と語るのは、大会会場から車で1時間ほどの街に住むアジア系アメリカ人女性のビバリー・ハラーだ。


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