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吉田:仕事自体は楽しいです。でも、ITとはいえ日本的な雰囲気もあって、能力の偏りがある人にもオールラウンダーを求めてくるんですよね。この人の得意なところだけやらせれば絶対に生産性が上がるのに、苦手そうなところもやらせるから、トータルで組織としてもったいないんです。会社内のムダを減らすきっかけとして、発達障害に関する勉強は続けていきたいです。

僕以外にも、指示がちゃんと理解できていない中年の総合職の方もいらっしゃいます。でも、人当たりはいいし、根本的には純粋でいい人なんだけど、空気が読めない部分がある。その人の周りにいる人に「彼はこういう特性がある」というと、だんだん雰囲気がよくなってきたりします。職場の身近な部分から、働きやすさについて広めていけたらと思います。

発達障害を免罪符にしたくない

山村:楽しく仕事ができるっていいですね。自分が就活していたときゼミの先生に「どんな仕事、条件で探したって、最終的には人間関係だからね」と言われました。自分は新卒で食品会社に勤めていたときに肺気胸を患ってしまい、もう体がもたないと思って転職したんですね。幸いにも短大卒でありながら医薬品メーカーに派遣させてもらい、仕事自体はとても楽しかったんです。でも、向こうの組織からは、仕事ができる・できないということではなく、自分にコミュニケーション能力がないことで「一緒に仕事をする仲間としてふさわしくない」という理由で契約を切られてしまいました。

発達障害がマイナスの方向に助長されてしまっているとは思いますが、どちらかと言えば自分自身の問題だなと思います。発達障害ではありますが、発達障害を理由にごちゃごちゃ言いたくないんです、本当に。発達障害を免罪符に「お前は自分にこうしてほしいんだろう」というふうに相手に受け取ってほしくないんです。

光武 克(以下、光武):なるほど。難しいところだよね。それには100%同意するけど、僕は発達障害をすべて職場にも公表しています。それは円滑にコミュニケーションするためなんだよね。どこでコミュニケーションの齟齬が起こりやすいか、どういうときに迷惑をかけやすいか、ということを最初から全部説明しておくために僕は公表している。でもそこって、免罪符にするのではなく「ここが自分は失敗しやすいからフォローをお願いします」という意味なんです。

――人に頼ることは大事ですよね。

光武:大事だと僕は思います。絶対自分だとミスするので、そこのところを最初から「ここはできないです」「そこに関してはお願いだから助けてください」「代わりにここはできるので、ここは思っている以上の結果で返します」といった形で自己紹介することが多いですね。

山村:そこ、すごく難しいです。未だに、人に頼るのと人に甘えるのはどこが線引きかというのに迷います。自分にとってはできないことだから頼っているつもりでも、「頼ってくれてありがとう」と言う人もいれば「それはただの甘えだからこっちに来るな」と言う人もいる。


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