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この研究が示唆しているポイントで日本にとって最も重要なのは、人口動向とインフレとの関係は「非線形的」であるということです。不動産という資源は有限なので、人口が増えている間は、需要が増えて地価は上昇します。ただし、不動産の需要が増えると、それに刺激を受けて不動産開発も進むので、インフレ圧力は緩和されます。

一方、人口が減少に転じると需要が減るので、今度はデフレ圧力がかかります。しかし、人口が減り始めても、不動産のストックはなかなか減らないので、デフレ圧力はより大きくなります。

『日本人の勝算』刊行記念イベントとして、紀伊國屋書店 梅田本店主催、デービッド・アトキンソン氏の講演会を2/22(金)19時30分よりOIT梅田タワーで実施します。詳しくはこちら(撮影:今井康一)

先ほどの研究によると、人口が増えることにより生じるインフレ圧力より、人口が減ることによるデフレ圧力のほうが約2倍大きいと分析されています。

おまけに、経済学的には、貯蓄が少ない若い人はインフレを好み、貯蓄が多い高齢者はデフレを好むと言われます。国民が高齢化すればするほど、インフレを嫌い、デフレを好む政策が優先されるのです。

これまでの連載のコメントを見ても、「物価が安いのはすばらしい」という主旨のものがかなりあります。とくに上の世代は「いいものをより安く」を好む傾向があるのでしょう。「日本型資本主義」とよく言われますが、案外日本は「経済学の教科書どおり」なのが興味深いです。

企業の「生き残り競争」がデフレ圧力を強める

人口が減ると需要が減るので、どの業種でも少なくなった需要の取り合いになります。例えば今まで10社の企業が存続できていたのに、8社しか生き残れないような状況になります。

こういう状況になると、10社が10社とも、最後の8社として生き残れるように、激しい競争が起こります。その過程では、各社とも利益を削るのはもちろんのこと、人件費をはじめさまざまな経費も削り始めるので、競争がどんどんと激化し、過当競争に陥ります。

最終的に生き残った企業は、競争相手が減るので、大きな利益を手にすることができます。これを「last man standing利益」と言います。

日本では、人口が減少するとともに高齢化が進み、ただでさえ需要が減少しているのに、さらに悪いことに、規制緩和が悪用されて労働分配率が大幅に引き下げられました。その結果、デフレを一層悪化させてしまったのです。つまり、日本はlast man standing利益を求める競争によってデフレを長期化させてしまったのです。

人口減少で日本企業に『大合併』時代が訪れる」では、企業規模の拡大の必要性について書きましたが、このlast man standing利益を求める競争を緩和するためにも、企業の合併・統合促進政策は不可欠です。


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