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国の借金や社会保障制度の維持の観点から、日本では国民の所得を増やす必要があります。そのためには生産性を上げることが必須です。

生産性を上げなくてはいけない日本にとって、「輸出比率の高い国はおしなべて生産性が高い」という事実を見逃すべきではありません。

輸出を増やせばいいと言うのは簡単ですが、生産性の向上と輸出比率の因果関係を検証しておくことも重要です。

先日上梓した『日本人の勝算』の執筆にあたって、海外で発表された生産性に関するたくさんの論文を参考にしました。去年の夏に3000ページ以上の海外論文を読みましたが、大変勉強になりました。その中で、とくに輸出に関して、すばらしい分析結果を見つけ感動しました。

それは、まさに輸出と生産性の因果関係を分析したものでした。輸出をするから生産性が高くなるのか、それとも生産性が高いから輸出ができるか。この「鶏が先か、卵が先か」に似た疑問に対する答えが、明白に導き出されていたドイツの論文です。

輸出と生産性なら、「生産性が先」

結論から言うと、輸出をするから生産性が高くなるのではなく、生産性が高いから輸出ができるというのが正解だそうです。つまり、生産性の低い企業では、輸出をするのも難しいのだそうです。

とくにポイントとなるのは、輸出をしようとする企業の場合、輸出を決めてから実際に輸出を開始するまでの3年間と、輸出を始めてから2年の間に生産性が次第に上がる。そして、この5年間のうちに、ほかの輸出を継続している企業と同水準の生産性が達成されると分析されています。

つまり、輸出することを決め、それに向かって生産性を事前に高めることが、輸出を成功させるために最も大事だというのです。

実はこの説が正しいことも、日本の観光産業の事例で確認することができます。日本では2013年ごろから、訪日外国人客誘致のため、政府主導でさまざまな改革が進められてきました。具体的には、最先端技術の導入による入国手続きの簡略化、フリーWi?Fiの提供、文化財の多言語化、トイレの洋式化、アクティビティ企業の増加、ホテルの増設など、さまざまな取り組みとともに積極的な設備投資も行われてきました。

その結果、観光資源のレベルアップがなされ、2013年には1000万人少々だった訪日外国人客数は、2018年には3倍の3000万人を突破しました。もちろん、その間、日本の観光産業の生産性が飛躍的に伸びたのは言うまでもありません。まさに、先ほど紹介した論文のとおりの道筋をたどったのです。


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